介護施設で働いていると、日々の業務とは別の“悩み”がつきまといます。
そのひとつが「情報機器が苦手な同僚」の存在です。
特にスマホやアプリ操作が難しいと感じてしまう50代の同僚は少なくありません。
私の職場にも、そんな“情弱”と呼ばれてしまいがちな50代の女性がいました。
連絡アプリが既読にならない。
シフト確認の方法が分からず、毎回人に頼ってしまう。
施設のログイン操作を何度教えても間違えてしまう。
最初は「どうしたら覚えてくれるんだろう」と焦りと苛立ちが入り混じり、
教えるこちらも正直しんどい日がありました。
でも、その同僚がある日を境に少しずつ変わっていったのです。
できなかった操作が、少しずつできるようになり、
質問も自分からしてくれるようになり、
気まずそうだった表情が、安心したようにほころぶ瞬間が増えました。
この記事では、
介護現場で実際に起きた“情弱トラブル”と、
そこから私が試行錯誤して見つけた
「寄り添う教え方」や「サポート方法」をすべてお伝えします。
「何度教えても覚えてくれない」
「同僚のせいで業務が滞る」
「イライラしてしまう自分にも落ち込む」
そんな悩みを抱えている方にこそ、
介護現場のリアルなストーリーとして読んでほしい内容です。
結論:情弱とされる50代同僚は“正しいサポート”で必ず変わる
結論から言うと、
50代だから覚えられない、わからない――ではありません。
年齢の問題ではなく、ほとんどの場合は
「教わり方」や「過去の経験」に原因があります。
そして
寄り添い方と教え方を変えるだけで、確実に変わります。
私は実際に、その変化を目の前で見ました。
“情弱”と呼ばれていた同僚は、今では私より早く通知に気づくこともあるほど成長しました。

そのきっかけは、
「もう一度、最初から優しく教えてみる」
という、ただそれだけのことでした。
現場で実際に起きたトラブルと私の悩み
同僚Aさん(50代後半)が入職してきた頃、
私は毎日のように小さなトラブルに巻き込まれていました。
連絡アプリの“既読がつかない問題”

Aさん、今日の会議の資料届いてますか?

あれ、そんなの来てた?
確認すると通知は届いているのに、
アプリを開く操作が分からず、未読のまま。
そのせいで業務の連携が遅れ、現場がバタつきました。
施設システムのログインミス
毎回パスワードを忘れてしまう。
メモしても、どのメモがどのパスワードか分からない。
システム担当のスタッフが手を止めては再発行し、
その度に時間が取られ、若いスタッフにしわ寄せが来る。

申し送りの読み落とし問題
紙の時代なら読みやすかった内容も、
タブレットになってからは操作ミスで最後の部分を開けない。
そのまま伝達に抜けが出てしまう。
私自身のストレス
私はまだ若手で、
「仕方ないよね」と言える余裕がない時期でした。
何度教えても覚えてもらえないことに、
正直イラッとしてしまう日もありました。
でも、そんなある日、
Aさんがぽつりとこぼした言葉にハッとしました。
Aさんの本音

若い人に聞くのが申し訳なくて…。できない自分が恥ずかしいの。
その一言で、
“ただ覚えが悪い人”ではなく、
怖さや遠慮を抱えているだけの人なのだと気づいたのです。
なぜ50代同僚は情弱と見られるのか?背景と心理
「どうしてこんな簡単な操作が…?」
と思ってしまうこともありますが、
背景にはいくつもの理由があります。
若者と比べて“教わる経験”が圧倒的に少ない

実際に50代のスタッフにこれまでにスマホ操作や、
アプリの使い方を誰かに教えてもらったことはあるか尋ねたところ、
「一度もない」とのことでした。
なんでも「使う用途や必要性がないので、教えてもらう必要がないと感じていた」とのこと。
使い方を知らないという以前に「使う必要が無い」という意識があることがわかりました。
このような背景事情がわかれば、適切な対応ができますよね。
今回の場合、仕事の連絡等はスマホのアプリを使うことが多いので、
「使う必要性」「慣れておく重要性」を具体的に説明してあげることが適切です。
「こういう理由で仕事上必要なので使い方を覚えて下さいね」と丁寧に教えてあげれば、
50代の自称「機械音痴」とおっしゃる方でも、すぐに使えるようになります。
過去の叱られ体験がブレーキになる
実際に50代のスタッフに「昔、仕事で失敗したときどうだった?」と話を聞いたところ、
「上司に強く叱られて、そこから“質問するのが怖くなった”」と教えてくれました。
どうやら、若い頃の職場は今よりもずっと厳しく、
“聞く=迷惑をかけること”という空気が強かったようです。
つまり、スマホ操作が苦手なのではなく、
「失敗したくない」「聞いて怒られたくない」という心理的なブレーキが残っていたわけです。
こうした背景事情を理解できれば、

「ゆっくりで大丈夫ですよ」
「ここは皆さんつまずきますよ」
といった安心を与える声かけが何より大切だとわかります。
丁寧なフォローを続けることで、
「質問していいんだ」と感じてもらえ、操作にも前向きになっていきます。
年下に頼ることへの遠慮・恥ずかしさ
別の50代スタッフにも話を聞いたところ、

「自分の子どもくらい年下のスタッフに聞くのって、なんか恥ずかしくて…」
と本音を教えてくれました。

どうやら、わからないことを年下に尋ねる行為自体がストレスで、
つい質問を後回しにしてしまうそうです。
しかし背景を知れば、適切な対応は明確です。
こちらから

「一緒に確認しましょうか?」
「ここ不安じゃないですか?」
と声をかけてあげることで、
“聞きやすい空気”を作ることができます。
質問できる環境さえ整えば、覚えるスピードは驚くほど上がります。
“わからない”ことを責める雰囲気が怖い
50代スタッフの多くが口にするのは、

「わからないって言ったらバカにされるんじゃないかと思った」
という声でした。
過去の環境では、
“できない=怠慢”
と捉えられやすく、相談しづらかった時代背景があります。
つまり、“情弱だからできない”のではなく、
“わからないと言うこと自体が怖い”という心理状態なのです。
ここを理解できれば、

「できなくて当たり前ですよ」
「みんな最初はここでつまずきます」
といった肯定的な雰囲気づくりが必要だとわかります。
責められない環境が整えば、
本人の不安が減り、一歩踏み出せるようになります。
本人は“覚えたい気持ち”がある
興味深いのは、50代スタッフ自身は
「本当はできるようになりたい」
「迷惑かけたくないから覚えたい」
と強い前向きな気持ちを持っていることです。
ただし、
・聞くのが怖い
・恥ずかしい
・何から覚えればいいのかわからない
という心理的ハードルが邪魔をしているだけ。
背景を理解して声かけを工夫すると、

「ここまでできました!」
「なんか自分でもびっくりです!」
と表情が明るくなり、どんどん操作を習得していきます。
つまり、
適切なサポートさえあれば、50代でも必ず成長できるのです。

私が実践したサポート4ステップとその効果
ここからは、私が実際に行い、
Aさんに大きな変化をもたらした方法です。
難しいことは何もありません。
ただ、相手の不安に寄り添うことを中心にしました。
ステップ1:否定せず、不安を取り除く言葉をかける
「大丈夫ですよ、最初はみんなできないです」
「私も最初は同じところでつまずきました」
この一言だけでAさんの表情がほっと緩むのが分かりました。

人は、安心できると覚える力が上がります。
逆に“怖い”と脳が固まり、覚えられなくなるのです。
ステップ2:手順をシンプルにする(3ステップに分解)
例えば、施設アプリのログイン。
以前は6つの手順があり複雑でしたが、
私はAさん用に3ステップに縮めた専用メモを作成しました。
- アプリを開く
- IDを入力する
- パスワードを入れる
余計な情報を省くと、覚える負担が一気に軽くなります。

ステップ3:質問しやすい空気づくり
Aさんが質問してくれるように、
私はこちらから先に声をかけるようにしました。

今日の操作、不安なところありますか?
一緒に見てみましょうか?
受け身ではなくこちらから動くと、
Aさんは「聞いてもいいんだ」と安心できます。
ステップ4:成功体験を意図的に作る
まずは絶対ミスしない操作から挑戦してもらう。
できたらすぐに褒める。

できた…!

すごい!今日は完璧でしたよ!
この「できた」という経験が、
克服の一番のエネルギーになりました。
人は“自信”がつくと驚くほど変わります。
before/after:50代同僚が克服して変わった瞬間
Aさんの変化を一言でまとめるなら、
「諦めの表情が、自信のある表情に変わった」です。
| before | after |
| スマホ操作が怖い | 通知に気づいて先に確認してくれる |
| 通知を開けない | ログインも自力でできる |
| ログインができない | 分からない時は「これ聞いてもいい?」と自ら質問 |
| 聞けずに固まる | 表情が明るい |
| 気まずそうに謝る | 「最近この仕事が楽しい」と言ってくれる |
この変化こそ、
情弱は克服できるという何よりの証拠です。
今日からできる情弱サポートの実践チェックリスト
どれか一つでも実践すると、
あなたの職場の空気が必ず変わります。
まとめ:情弱克服の鍵は“年齢”ではなく“寄り添う教え方”
Aさんの変化を見ていて実感したのは、
できない人を責めても何も変わらないということです。
年齢でも性格でもなく、
ただ“教わる環境”が整っていないだけ。
少しの工夫で、
同僚は確実に変わります。
そして、変わったときの
「できた!」という笑顔は本当に宝物です。
介護現場は、
年齢も背景もバラバラな人が集まる場所だからこそ、
互いの弱さを支え合える関係が強みになります。
あなたの職場でも、
小さな一歩が必ず誰かの成長につながります。
よくある質問(Q&A)

Q1:50代の同僚が何度教えても覚えてくれません。どうしたらいい?

一度に多くを教えず、“1操作だけ覚える日”を作ると成功体験が積みやすくなります。
そして手順を3つ以内に分解してください。

Q2:同僚が質問してくれません。どう声をかけるべき?

相手から来るのを待つのではなく、
こちらから「今日、不安なところあります?」と聞くのが最善です。

Q3:教えすぎは良くないですか?

「全部お願いされる状態」は避けた方がよいですが、
最初の数日は手厚くサポートし、慣れたら徐々に任せるのが安全です。

Q4:同僚が“情弱”で職場に迷惑が出ています。どうしたら?

感情的に指摘すると逆効果です。
まず“つまずいているポイント”を特定し、そこを重点的に教えてあげましょう。

Q5:克服にはどのくらい時間がかかる?

早い人なら1週間、
慎重な人でも1〜2ヶ月で確実に変化が現れます。


